田辺地方でも言える事ですが、経済連の言いなりとなっている全国紙よりも、地方新聞の方が、より問題の核心を突いた報道を行っています。
西日本新聞が10/18より、特集「寄り添う守る ~博多・医院火災の教訓~」を連載しており、10/25で8回を迎えています。
衝撃的なのは、10/19付(2)有床診療「もう無理」「町医者の使命感だけでは」と題した記事。
10/23にも状況を取材し掲載していますが、防火態勢の強化が求められた場合の負担を危惧し、入院患者の退院手続きを開始したり、入院の廃止を検討し始めた有床診療所が出てきた模様です。
記事抜粋:
◆福岡県南部の外科医院は火災直後から、13人いた入院患者の退院や転院手続きに入った。患者は身寄りがなかったり、脳梗塞で身体にまひがあったり、自宅で生活を営むのが困難な人が多い。末期がんの患者には、この医院が「最後のよりどころ」だった。 院長は、ベッドをいったん空にして、当直態勢など夜間の火災への備えを検証する。その上で「患者の命に責任が持てない」と判断すれば、無床の診療所にするという。診療報酬が上がる見込みがないのに、防災態勢の強化など負担ばかり求められてもつらい。「(患者や地域には)心苦しいが、今回の火災が本当にショックで…」と声を詰まらせた。
◆有床診療所は親から子へと受け継がれる場合が多い。大分県のある循環器内科医院の院長も、父の跡を継いだ。息子も医師だ。「地域に必要な存在と信じて代々頑張ってきたが、今回の火災で心が折れそうになる。『有床』は私の代で終わりかも」と漏らす。
◆7年前に有床をやめた福岡県大川市の松田知愛(ともよし)医師(56)はこう指摘する。「町医者の使命感だけでは、世の中が許してくれなくなった。その結果、患者にとって最後のとりでがなくなっていくだろう」
◆高齢者の受け皿なくなる
有床診療所の防火対策や課題について、全国有床診療所連絡協議会広報担当理事の八田喜弘さん(74)=福岡市早良区、八田内科医院院長=に聞いた。
-今回の火災を受けての対応は。
「防火扉の点検や夜間避難訓練の必要性が浮き彫りになったので、今月中に会員の有床診療所3259施設を対象に緊急アンケートを行う。スプリンクラーの有無や消火・避難訓練の回数など、まずは防火態勢の実態を把握したい」
-火災以降、無床化を検討する医院もあるが。
「経営が厳しい中で防火設備の更新が必要になれば、後継者のいない医院の無床化が加速する恐れがある」
-だが、有床診療所は自立生活が困難な高齢者の受け皿でもある。
「1人暮らしの高齢者が体調を崩して生活できないとき。介護施設に空きがないとき。有床診療所は医療と介護のはざまで置き去りにされた弱者を入院という形で受け入れてきた。なくなれば、地域医療に穴があく。広く存在意義を理解してもらい、存続できる仕組みの構築を国に訴えたい」
・・・誰も述べないので言いますが、実は、有床診療所の防災対策は防火扉やスプリンクラー設置だけで解決しないのです。
もしも大きな災害が生じて、停電となった場合、当院のような看取りを担う有床診療所の場合、痰の吸引を行う中央配管の吸引器や、人工呼吸器や輸液ポンプ、シリンジポンプ、生体モニターといった生命を維持知るために必要な医療機器が全て停止する恐れがあり、非常用バッテリーだけではすぐに動かなくなってしまいます。その為、自家発電装置設置が望ましいのですが、設置には最低1千万円以上の経費が必要で、それに対する助成も国は行ってくれません。
現在の安すぎる有床診入院基本料では、重症者を多数抱える当院のような有床診療所の防災対策推進は不可能で、それを訴え続けているにも関わらず、修正しない厚生労働省の責任はとても重く、今回の福岡の火災のような惨事は、厚労省が正当に有床診を評価しない限り、今後も生じるだろうと私は考えます。
恐らく、これまで有床診を、その役割を正しく理解せず政略的に潰そうとしてきた厚労省としては、これまでの非を認めるのがイヤで、今さら方針を変えたくないのでしょうし、証拠が残らない様に、このまま有床診を潰したいのが本音でしょうが、近年、有床診の地域医療における必要性が数々の証拠から無視できなくなっており、厚労省大臣も有床診の必要性を認めています。それにも拘らず厚労省官僚はその事実から目を背け、これまでの間違った方針を訂正しないとしたら、民意を無視した厚労省のご都合主義的・政略的有床診潰しであり、それでは蛮行を繰り返す某隣国の政治と何ら変わらず、日本の民主政治の危機であると危惧します。
10月23日の NHKニュース記事を抜粋・・・
「有床診療所」の在り方を議論している自民党の議員連盟が会合を開き、冒頭、議員連盟の会長を務める野田税制調査会長が、「この火事を深刻に受け止め、原因や背景を分析し、問題解決を図ることが大事だ。先延ばしはできない」と述べ、出席者からは、「スプリンクラーの設置など、防火対策の強化には費用の補助が必要だ」という意見や、「経営状況が厳しいなか、地域医療を守るために入院患者を受け入れている実態を踏まえて、経営基盤の強化を支援すべきだ」という指摘が相次ぎ、議員連盟として、来年度予算案の編成や診療報酬の改定などで、政府に対し有床診療所への財政支援を求めていくことを確認した。
・・・何時もの様にその場の掛け声だけで終わらせず、本当に今度こそ実現させて下さいね!(祈)。
厳島神社で神頼み・・・まさか出雲にお出かけでは!?(笑)
藤川謙二日本医師会常任理事は、有床診療所の防火設備を充実させるための財政支援を国に求めていく方針を10/17に記者会見で示し、以下の様に述べられています。
「有床診療所の経営は非常に厳しい。今よりしっかりした防火設備の設置が義務づけられれば、必要な費用の負担に耐えられないところがほとんどだ」
「今回の火災をきっかけに有床診療所が次々に無床化していくようなことになれば、地域の医療が維持できなくなってしまう。今年度の補正予算も含め、政府・与党に財政支援を求めていく」
「有床診療所の防火設備を強化しろといわれても、長年にわたって診療報酬が非常に低く抑えられてきた結果、設備投資にまわすような資金はなかなかない」
有床診療所がスプリンクラーの設置費用の負担を一方的に押し付けられることのないように、との日医の考えですが、スプリンクラー設置だけでは有床診の安全は確保できません。今回、一人夜勤の有床診療所が多かったことに私は驚きました。夜勤を一人しか雇えないほど、有床診療所の経営は悪化しているのです。
スプリンクラー設置への助成だけでは焼け石に水です。今度こそこの問題の根本を本気で解決する為、有床診療所入院基本料増額を実現してもらいたいです。
ちなみに、ネット上、この内容を紹介しているマスコミ記事はほとんど見られません。
近年、日本医師会の見解を聴きもせず否定する世間一般の傾向が見られ、マスコミの偏った報道姿勢が国や国民の判断を狂わせているように思います。マスコミがこうした大切な問題を正確に報道してこなかった為、ついに悲劇が生じたのではないでしょうか?マスコミにも大きな責任があると思います。マスコミに真摯な報道姿勢を望みます。
本日、総務省に、有床診療所における火災対策の有り方を検討する「有床診療所火災対策検討部会」が発足し、11月7日に第一回の会合が開催されるようです。12人の検討委員の内、有床診療所の理不尽な経営状況を正確に理解し、訴えてくれそうなのは、日本医師会有床診療所担当の藤川謙二常任理事と、全国有床診療所連絡協議会(人選中)からの代表者お二人と思われます。オブザーバーとして厚労省の役人も2名人選中とのことで、これまで厚労省が無視してきた問題の本質、つまり有床診療所がどんなに頑張っても、あまりに安い有床診療所入院基本料によりほとんどの有床診入院部門は赤字であり、設備投資や人件費にまわすコストも維持できず、外来や在宅・介護での報酬をつぎ込んで病床をどうにか維持してきた厳しい現実をしっかり訴え、有床診の正当な評価を怠ってきた厚労省の責任を追及し、有床診が病床を安心して維持できる報酬上の評価を獲得して頂きたいと期待しています。
修理の上、再検査を実施し
当院の防火扉が全て正常に作動することを確認致しました。
ご心配をお掛け致しました。
大学生時代、何時も可愛がって下さった
とてもユニークで大好きな先輩。
カンボジアでの仕事の帰り道、
当院の写真を撮って
送ってくれました。
本当に地図そのまま(驚)。
先輩、次はもっと近くに寄って、
温泉タマゴ食べに行きませんか?(笑)。
地方自治体が防火扉の点検義務を課していないのは、やはり防災上問題があると思います。
誰も火災で焼け死にたくはないので、本日、当院の防災設備の管理を依頼している(有)ワカボーに、院内5カ所にある防火扉の作動試験を実施頂きました。
当院の火災探知機は全て煙に反応します。
煙を感知すると・・・
赤く点灯します。
火災報知器が作動して・・・
防火扉が閉まります。
防災扉を閉じるフック
扉側
ばねで閉まるそうです。
全て順調に閉まると誰もが考えていましたが・・・
5カ所の防火扉のうち、1カ所で防火扉の上部とサッシの隙間が狭く、擦れて上手く閉まらないことが判明致しました。
閉まらなかった防火扉
ゴミが挟まっているわけでもなく、障害物が置いてあるわけでもなく、くくりつけているわけでもなく、目視の点検だけでは異常を発見することは困難です。
直ちに工務店に連絡し、大至急修理頂くよう依頼致しました。
念のため、田辺消防本部に報告し、指示を仰ぎましたところ「可及的速やかに修理を行えばよいです」とのお返事でした。
職員への周知を徹底し、修理完了までの間、火災時手動にて閉鎖致します。
今回の点検を教訓として、当院では今後、年2回の防火設備点検時に防火扉の作動テストを自主的に行いたいと思います。
建替えて2年半しか経過していない当院ですら、すでに老朽化が始まっており、この有様です。
体の不自由な方々に常日頃安心してご利用頂く為には、設備の絶え間ない更新が必要で、その為にはどうしても経費が掛かります。
スプリンクラーも国の補助なしで義務化されるならば、赤字経営は確実で、有床診療所の存続は不可能です。
国もマスコミも高齢化する地域医療現場を充分理解せずに医療費削減ばかりを主張します。
でも、人の生死を扱うにも関わらず介護施設よりも報酬は安く、責任の重い有床診療所の経費削減はとっくの昔に限界を超えているのです。
有床診療所の経営者は誰もが防災管理の行き届いた中核病院の様な環境で治療に専念したいと考えているはずですが、有床診療所入院基本料が理不尽に安く抑えられている現状では、病床を閉じるか、古い施設の改修を細々と繰り返すしかないのです。
福岡で火災を起こした有床診療所にも管理上の問題点は多数指摘できますが、医療行政が有床診療所の経営難を無視し、病院と異なり元々安い有床診療所入院基本料を削減し続けていることにも要因があるのです。
福岡の有床診療所火災を教訓に、国もマスコミも、日本医師会のトップも、有床診療所のことをもっと勉強し、理解してもらいたいと思います。
福岡の有床診療所火災を踏まえて行政が動いています。
本朝、田辺消防署から電話があり、本日か明日、消防法に基づく立入検査を行いたい旨の連絡がありましたので、「直ぐにどうぞ」とお返事しましたところ、早速午前11時より院内の検査が施行されました。
結果は上記の通り
「異常なし」。
良い機会だったので、逆に消防署の方々に要望を出してみました。
① 「防火管理者の講習会をウィークデイに2日間開催しても、多忙な開業医が外来や入院患者様を2日間放置して出席できるわけがないので土日開催を検討してほしい」
② 当院もスプリンクラーの設置義務が無く付いていないが、介護施設よりも重症患者を抱えている為、避難に時間がかかる。プリンクラーの設置を考えたいが、国の助成金も無く、介護施設よりも安い有床診療所入院基本料ではとても付けられない。どうにかしてほしい。
消防署の方々は理解を示してくれました。
国はこの有床診療所の危機的状況を今度こそ理解して下さるのでしょうか?
病床として認められている有床診療所は、介護施設よりも安い入院基本料のため施設が老朽化しても建替えできず、改修を繰り返すしかないのが実情で、全国有床診療所連絡協議会は厚労省にも議員にも医師会にもその点をこれまで何度も何度も訴えてきました。当院は理事長が外来・在宅診療でコツコツためてきた私財を全て投げ打ってなんとか建替えたものの、現行の有床診療所入院基本料ではとても建築費用の回収など出来ません。当院のような馬鹿げた建替え計画を実行に移せる有床診療所など存在しないと思います。当院は現在、9割の患者様が自力では移動できないので、福岡の整形外科より深刻です。酸素療法中や、昇圧剤の持続静注を行っている患者様などは、動かす事自体危険な場合もあります。そうした患者様を残して院長が逃げる訳にはいかないので、入院患者様に死者が出る様な大きな火災が発生したら、現状では院長は死ぬしかないのです。死にたくないので赤字になってもスプリンクラーを設置したいが、かなり厳しい。この様な理不尽に安い有床診療所入院基本料を放置している厚労省や政治家には、死んだら呪ってでてやろうと思います(笑)。
病院と同じく有床診療所は、体の不自由な患者様の入院治療を担っています。
当院の入院患者様も福岡の整形外科と同じくほぼ全員が寝たきりで、担架やストレッチャーで搬送を要します。その上、酸素吸入や昇圧剤の持続点滴を行っている方も多く、より大変です。
にもかかわらず、有床診療所入院基本料は病院の1/3程度で、介護施設はおろかビジネスホテルやネットカフェより安く、この安すぎる費用で自分では身動きのとれない患者様の命を守れという行政の感覚は異常です。
これでは任意でスプリンクラーを設置したくても、ボランティアでないと行えませんし、老朽化する設備の更新もままなりません。
結果、全国の有床診療所は閉鎖に追い込まれているのですが、地域の需要は無視できないのです。
全国有床診療所連絡協議会が必死に政治家や厚労省、マスコミに訴えているのですが、全然動いてくれません。この責任はとても重いと思います。
同業の医師ですら、全然理解しておらず、日医のトップにも訴えますが、他人事の様です。
大好きな油絵を夏から再開した私。
今、人物画の修行中です。
「窓辺」p100
思い切って県展にチャレンジしたのですが、
思い切り落選しました(泣)。
再出発の成果は黒星二つ。
これが、私の今の実力。
今秋、とても凹んでいる私(笑)。
自由な学生時代の様には、もういきません。
でも、院内に、自家製の絵が飾れる日を夢見て
修行あるのみ。
昨日未明に博多で起きた火災のニュースに目が釘付けです。
殆どのメディアが「病院の火災」と間違って報道していますが
当院と同じ19床の有床診療所火災です。
病院ではありません。
未だにマスコミは「有床診療所」という言葉を知らないのです。
鉄筋コンクリート製の建物で、親子2代で運営、医師の自宅も併設と、とても他人事とは思えません。
元院長夫妻を含め複数のスタッフが駐在していたにも関わらず、初期消火に失敗し、防火扉も閉まらず、多数の死者が出ている模様で、同じ有床診療所運営に関わる者として、本当に心が痛むニュースです。
初期消火に失敗することは想定内です。火災訓練でも初期消火失敗後の手順を訓練しています。
でも、理解出来ないのは、何故通報が遅れたのか?何故防火扉が閉まらなかったのか?
当院では火災報知器が鳴ると、119番による消防への通報とは別に、火災報知器に連動したセキュリティシステムによって自動的に大手警備会社に火災発生の通報がなされ、当院に連絡が取れない場合は、警備会社から直ちに消防署に通報される事となっています。また、院長の私も院内併設住宅で生活している為、当院の火災報知器の大音量によって、嫌でも直ちに起こされ、2名の夜勤者と行動を共にすることとなります。また、夜勤者2人には院内PHSの携帯を義務づけており、何処からでも直ちに、連絡がとれる体制をとっています。
当院の病床は2階に集約されており、中央のナースステーションで管理をしています。
当院には避難経路となる階段が医院両端と中央に存在し、屋上にも通じています。火災報知器に連動して閉まる防火扉も当然設置されており、周囲に防火扉を妨げる物品の設置は禁止しています。
防火扉がちゃんと閉まれば、鉄筋コンクリートの建物の場合、そこから先には、直ぐには火の手は及ばず、防火扉の向こう、つまり階段室から先は一次避難場所として利用できます。当然、出火元の階以外には火の手も及ばず、夜勤体制でも避難できる計算です。でも、例えば、当院に出入りする業者、つまり薬や医療器材の搬入や、外注している病院食の搬入、院内清掃業者が一時的に防火扉周囲に物品を置いてしまうと困ります。出入り業者への指導を徹底したいと思います。
食事は全て外注となっており、院内での調理は行っておりません。当院はオール電化ですので、炎も存在しません。
当院で一番注意しなくてはならないのは漏電、コンセント周りの埃によるトラッキング現象が考えられます。
今日、念のため、スタッフみんなで、院内全てのコンセント周りを掃除しました。
今後も定期的にコンセントチェックを行う予定です。