昨夜11時頃、当院の所在する上屋敷3丁目で大規模火災がありました。
当院にも煤が飛来し、当初、入院患者様の避難も検討しましたが、幸いにも消防隊の大活躍のお蔭で、当院は難を逃れました。
皆様には多大なるご心配を頂き、沢山の安否のお電話を頂戴しました。
本当に有難うございました。
火災のあった「新地」は、祖父の時代、遊郭として賑わった田辺の名所で、私も中学時代通学で通った美しい街並みです。
往診で伺っていた芸子さんの風情ある家屋も全焼し、レトロな新地のアーケードも焼けてしまい、本当に信じられません。
祖父の代からお世話になっている患者様方も被害にあわれており、とてもショックです。
心よりお見舞い申し上げると共に、「新地」の早期復興と、城下町として細い路地が複雑に入り組み、消防車が入れない、城中地区の防災対策推進を望みます。
当院入院の大多数を占める誤嚥性肺炎の患者様
自力で痰喀出が出来ず、窒息を防ぐ為に常時、頻回の痰吸引を要している。
気管切開を行っていない場合
肺炎末期になると、在宅での十分な喀痰吸引は困難となる。
十分な痰吸引を行わなければ、患者様は呼吸苦から逃れられない。
本当に苦しいと思う。
喀痰で気道閉塞を繰り返す誤嚥性肺炎末期の患者様には
無理して在宅で看取るよりも
何時でもすぐに痰が吸引できる、入院による看取りが適していると思う。
有床診療所が、そうした方のお役に立てると信じている。
現在、私が入院で痰を吸引している時間は、日曜、祝日に関わらず毎日1時間以上に及んでいて、病棟担当の看護師も平行して吸引を行っている。
気管切開を行えば痰の吸引や喀出は楽になる。
でも、ご高齢の患者様に、これ以上の侵襲を与えるのは気が引ける。
事実、当院入院の時点で、本人も、ご家族も、気管切開を拒否している場合がほとんど。
人工呼吸器もあまり望まれない。
でも、安らかな看取りは、誰もが望んでいる。
その、安らかな看取りを阻む最大の敵が
喀痰閉塞による呼吸苦。
肺炎の終末期には、低酸素状態が進行し、増加した痰による気道閉塞で、頻回の気管内吸引を要する。
中々気管内に吸引チューブが入らない場合も多く、患者様はとても苦しい。
吸引中、低酸素状態が進行し、吸引継続をあきらめなくてはならない事態にも少なからず遭遇する。
いくら頑張っても吸引チューブが気管に入らず、患者様と共にとても辛い思いをする場合が多い。
24時間生体モニターを装着し、動脈血中酸素飽和度を観察しながら頻回の喀痰吸引を行っている重症の方は現在3名。
夜中に酸素濃度が低下し、喀痰吸引に看護師から呼ばれるのも日常茶飯事。
ここ連日、看取りが続き、今も夜中の看取りを行ったところ。
現在午前4時半。
文字通りの24時間営業。
さすがに体力の限界を感じる。
大変なのは救急病院だけではない。
看取りを担う有床診療所の運営は
肉体的・精神的にもとってもキツイ。
入院基本料は不当に抑えられ
負担の重い診療内容に全く見合わない。
地域に必要とされているにも関わらず
有床診療所が急速に閉鎖していくのは当然。
政治家はもっと勉強すべき。
何処かの政治家は有償診療所?と思っていた・・・話にならない(苦笑)。
喀痰に対抗する最大の武器は
気管支鏡。
経鼻的に1分と経たず気管内に挿入できる。
痰吸引だけなら3分ほどで終了できる。
気管支鏡があれば気管切開はいらないと考えている。
ただ、問題がある。
内視鏡が光学式から電子内視鏡に代わり、大型化した為、内視鏡によるベッドサイドでのトイレットがとてもやりにくくなった。
ベッドサイドでの喀痰吸引に電子気管支鏡は大きすぎる。
当院では各病室に電子内視鏡用の院内LANを引いており、入院病床で電子内視鏡を行っている為、細かな観察には便利である。
しかし、現在の電子スコープは設備が大きすぎてベッドサイドでの取り回しが悪すぎる。
気管支鏡によるトイレットには、電池による超小型光源付の光学式ポータブル気管支鏡の方が遥かに使い勝手が良い。
研修医時代
私の医局が気管支鏡開発に深く関与していたこともあって
ポータブル気管支鏡も市販前からプロトタイプを使用させてもらっていた。
吸引管以外はコードレスで携帯に向き
携帯吸引器とのセットで容易に往診先でも喀痰吸引ならできる優れもの。
ベッドサイドに置いておいても邪魔にならず、何時でも何回でも簡単に吸引が出来る。
でも、ポータブルの光学式気管支鏡は耐久性に乏しく修理代が嵩む。
肺炎末期には患者様の呼吸苦を取り除く為、気管支鏡トイレットを頻回・緊急に要する。
それにも関わらず、気管支鏡を理解していない審査員に請求しても、なかなか頻回の利用が認められず、また、気管支鏡トイレットは緊急処置にも関わらず保険点数が低く、現状ではとても維持できない。
現在、内視鏡下気管支分泌物吸引の保険請求は1日たったの1200円。
これでは使用後の内視鏡洗浄にかかる人件費しか賄えない。
因みにポータブル気管支鏡の見積もりは安いもので100万円強。
1000回吸引を請求して、ようやく採算が取れる計算。
でも、恐らく気管支鏡のことを良く知らない保険審査員が、あれこれ理由を付けて減点してくるのは間違いない。
1000回分の気管支鏡トイレットの症状詳記などいちいち書いていられない。
厚生労働省は、気管支鏡での喀痰吸引を認めていないとしか考えられない。
この無茶な保険点数設定が、便利なポータブル気管支鏡の普及を妨げ、
誤嚥性肺炎患者の呼吸苦の元凶となっている。
喀痰による気道閉塞は生死に直結し、なにより患者様はとても苦しい。
気管支鏡トイレットの保険点数アップを切実に望む。
病院より理不尽に安く抑えられた(有床診)入院基本料の下で
無駄な経費削減を極限まで推し進め
譲れない部分に資源を集約することで
病院に負けない充実した入院環境の実現を目指してきましたが
入院患者様の利便性・快適性向上には
旧・診療所の遺産である
無差額病床の手動ベッドが永年の懸念材料でした。
消費税値上げを目前に控え
4月18日(木曜)午後(休診時間帯)
無差額病室の全ベッドを
パラマウントベッド:KA-5000シリーズ(3モーター)
に入れ替えます。
すでに差額病床の電動化は終了しており
今回の入れ替えにより当院の全入院病床が電動ベッドとなります。
同日は入院・外来ともご不便をお掛け致しますが
ご理解の程、宜しくお願い致します。
205号室(個室)入口にて
廣本直子氏:「時計塔」/Berne Suisse/2010
当院の特徴は
「医療を要する終末期患者様」の地域における看取りに
「病床」を用いている点にある。
「医療を要さない」看取りは介護施設や在宅で十分。
有床診のベッドは、正式に「病床」として認められた。
介護施設のベッドとは全く異なる。
ショートステイにも有床診療所のベッドが利用できるが、これは極めて介護寄りの消極的な発想。
介護施設と同じことを行っていても、楽ではあるが、コストがかさむだけで、有床診の存続意義は無い。
この前も、認知症があっておむつ交換も全介助、常にベッドから立ち上がろうとしていて、転落の恐れが高く、嚥下障害で流動食の食事介助を行っている極めて介護の手間のかかる患者様がおられた。
入所を介護施設が渋り、入所先が決まるまで、当院の医療療養病床で医療区分の加算を取れないまま診させて頂いたが、現行の安価な保健点数設定では、一日の入院費5千円ほどのレセプト請求しかできなかった。
これほど患者様にとってコストパフォーマンスの良い施設は有床診以外存在しないだろう。
とても神経を使い、手間の掛かる介護を要する引き取り手のいないこうした患者様を有床診で担当する事は、現状の保健点数では、明らかにボランティア。
有床診の運営は費用も手間も時間的拘束もかかり、とてもボランティアでは成り立たない。
有床診が介護施設と同じ事を行っていては、経営は成り立たず、潰れてしまう。
有床診が急激に減少している原因の一つは、介護への中途半端な介入にあると私は考えている。
医療行政に見捨てられ、介護施設の様に儲からず、24時間拘束され、責任も重い有床診を、それでも続ける目的は
「21世紀の地域社会に、やはり求められている」からである。
有床診が診るべき患者層は確実に存在する。
介護施設では決して診れない、病状の重い患者様。
具体的に言うと、当院では、誤嚥性肺炎を繰り返す患者様。
絶えず気管内吸引を要し、当院が得意とする気管支鏡トイレットや、中心静脈栄養(IVH)しか選択肢のない病状の重い患者様が少なからず地域社会に存在し、その方々のお役に立ちたいと考えている。
決して介護施設には被らないし、地域中核病院のベッドを長期にわたり独占してしまう、行き場所の無い患者様。
当院では、在宅でのIVHを用いた看取りも行って来た。
しかし、家族の見守りの精神的・肉体的負担が大きすぎて、よほど介護力のある家庭でも音をあげてしまい、結局入院を希望され、需要はあまりない。
当院では現在、誤嚥性肺炎で胃瘻や経管栄養も困難、中心静脈栄養下に肺炎治療を行っている入院患者様が全病床の2/3を占めている。
24時間持続点滴を要する重症患者様の比率が急速に増している。
14台ある輸液ポンプがフル稼働中であり、強心剤のカテコラミンを注入しているシリンジポンプ3台も全て稼働中(1台は修理中)で、14床あるナースコールと輸液ポンプとの接続ができる病床は満床である。
幸い生体モニターにはまだ余裕があるが、24時間持続輸液は現状の14名で限界に達した。
これ以上重症の入院患者様が増えると、輸液機材が不足するのみならず、夜間の当直看護師の負担も限界に達してしまう。
先日、院内会議で、安全な入院治療を確保する為、当面、新規入院受け入れを一時中止することとした。
今後、19床全てが中心静脈ラインの確保された重症患者様で埋まってしまう可能性も考慮し、すでに今月中を目標に、19床全てで輸液ポンプをナースコールと接続できる様、発注済である(生体モニターは現在、全病床接続可能)。
輸液ポンプも19床全てに配置準備中で、シリンジポンプの追加も決定している。
(話は変わるが入院ベッドも全病床、電動式に変更予定。)
今後、19床全てをフル稼働させる為に、絶対厳守すべき点は、安全の確保。
その実現には、夜間の人員配置の増強が必要不可欠である。
常に夜勤看護師を複数配置することが、入院患者様に24時間、安全な治療を提供する上で不可欠と考え、経営負担は増すが、現在、夜勤可能な看護師・準看護師の増員を行っており、看護師の夜間複数での勤務体制を確立中である。
(当然、当直の負担に見合った待遇を準備している)
道は険しいが、当院独自の「21世紀版有床診プロトタイプ」を確立したい。