昨日、和歌山市において、平成24年度第18回和歌山県有床診療所協議会総会が開催されました。奥篤会長の下、私も少しお手伝いをさせて頂きましたが、今年も下手な司会で終了時間を大幅に遅らせてしまい、来年こそクビにならないか心配です。講演には近年全国総会のシンポジストをお迎えしており、昨年は平成22年度の診療報酬改定にて10年ぶりの有床診療所入院基本料プラス改定を実現して下さった厚労省の佐々木健先生(和歌山県立医大出身)をゲストにお迎えし、充実した講演を頂きましたが、今年も日医における有床診療所分析の第一人者である日医総研主席研究員、江口成美先生をお迎えし、全国総会レベルの素晴らしい講演を頂きました。国会議員の先生方も3名お越し下さり、当協議会への協力を約束下さりました。
本協議会の歴史は、初代会長で、現・名誉会長の青木敏先生が全国有床診療所連絡協議会の20周年記念誌発行に際し、平成20年8月に「和歌山県有床診療所のあゆみ」としてまとめられており(全国有床診療所連絡協議会ホームページの「記念誌」のページからPDFファイルで閲覧できます)、そこから設立までの経緯を抜粋すると「全国有床診療所協議会の設立を医事新報で知った田辺市医師会の辻啓次郎先生(当院理事長)と西牟婁郡の隠岐和彦先生(故人)等が中心となり、田辺、西牟婁郡、日高地方で、有床診療所を開設している先生方と有床診療所の諸問題を話し合う会を開いたのが和歌山県で有床診療所について検討した最初でした。」とあり、「第5回の全国有床診療所連絡協議会総会(金沢市)の席で、辻先生(第2回から出席)とお会いし(私は第1回から出席)、和歌山県でも協議会を設立しようということになりました。正式には平成5年5月、田辺市医師会館で開催した、紀南地方の有床診療所協議会の席で本会設立を決定致しました。」とあり、「平成6年2月6日に本会を90名の会員で設立致しました。」とあります。紀南で産声を上げた当協議会も現在会員数は50名程と、設立当時から半減しており、その中には休床中も含まれ、昨年度も設立メンバーの一人である隠岐和彦先生を失ったばかりです。江口先生の講演によると、これでも和歌山県は近畿地方では人口10万人当たりに占める有床診療所の割合は13.2施設(平成22年医療施設調査)と一番多いとのことです。有床診療所の院長の年齢は60歳以上が60%を占めており(診療所全体では60歳以上は40%)有床診療所院長の高齢化がより一層進み、継承問題が待った無しの状況です。近年の有床診療所施設数の推移も示され、これまでおよそ月に20~30件台の減少であったのが、2012年の診療報酬改定後は月50件台の減少と、逆により一層有床診療所の無床化が加速しています。「平成23年度有床診療所の現状調査」では、有床診療所が抱える課題として「看護職員・スタッフの人件費確保(57.9%)」「医師の勤務負担の重さ(40.8%)」「施設設備の老築化(38.8%)」の3点が挙げられ、休床施設と無床化施設を対象とした設問で「病床復活の為に必要なこと」は「人件費を賄える報酬」「看護職員確保」「後継者確保」の順でした。「平成23年度厚労省医療経済実態調査」では有床診療所の経営は、入院収入がある施設は、入院収入がない施設(休床などの理由で)に比べて損益差額率が低い傾向がみられ、人件費のかさむ入院医療を行うことが経営の圧迫につながっている。」との分析結果でした。また、有床診療所の5つの機能のうちの「終末期を担う機能」を生かして、負担の大きい緩和ケアの患者数や終末期の患者数を増やすほど有床診療所の経常利益率が悪化するとのデータも示され、有床診療所が苦労をして地域に貢献しても報われておらず、早急に経営面の対策(有床診療所入院基本料の早急の引き上げ)を検討頂かないと、継承が手遅れとなり、絶滅が現実のものとなるのです。また、一度無床化すると病床復活は困難です。
先の「第25回全国有床診療所連絡協議会総会」で厚生労働省のお役人が示したスライドの写真を見ていてある事に気付いた。厚生労働省は社会保障・税一体改革の流れとして、新たに「在宅医療・介護あんしん2012」という施策を掲げ、在宅医療・介護の更なる推進を目指しているが、この在宅一辺倒の流れはやはり間違っている。「施設中心の医療・介護から、可能な限り、住み慣れた生活の場において必要な医療・介護サービスが受けられ、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指す。」のがこの施策の建前である。この施策では「我が国は国民皆保険のもと、世界でも類を見ない高水準の医療・介護制度を確立。しかし、入院医療・施設介護が中心であり、平均入院期間はアメリカの5倍、ドイツの3倍。自宅で死亡する人の割合は1950年の80%から2010年は12%にまで低下した。国民の60%以上が自宅での療養を望んでいる。死亡者数は、2040年にかけて今よりも約40万人増加する。」とし、「将来像にむけての医療・介護機能再編の方向性のイメージ」として2025年を目標に「病院・病床機能の分化・強化と効率化」と称して再び病床機能の再編に乗り出そうとしている。はっきり言って「もううんざり」である。厚生労働省はこれまでも施策の変更の度に、自ら先頭に立って普及を推し進めてきた病床群を無視し、全く別物のシステムを立ち上げ高額の報酬でおびき寄せる手法を繰り返してきた。多くの医療機関がひどい目にあった介護療養病床への誘導や、長年、有床診療所が担ってきたレスパイト入院の為に、有床診を無視して別の施設を立ち上げようとしたり、列挙すれば限がない。「掛けた梯子を外す」厚労省お決まりの手法は再犯率が極めて高く悪質である。機能していない在宅療養支援診療所の施策ミスを認めず、施策の中心に据えて巨額のお金を再び投入しようとしている。大変な無駄遣いである。国民の声を聴いて施策を作成している様に装っているが、あまりに偏っている。「はじめに在宅ありき」に違いない。「在宅医療・介護あんしん2012」という施策の根拠は「国民の60%以上が自宅での療養を望んでいる。」にあるが、決して「国民の60%が自宅での看取りを望んでいる」訳ではないのである。厚労省は在宅推進に都合の良いまとめ方でこの数値を提示している。厚生労働省の「終末期医療に対する調査」における、「終末期の療養場所に関する希望」のデータが根拠として示されているが、平成20年の最新データーの詳細を記すと、「なるべく今まで通った(または現在入院中の)医療機関に入院したい」8.8%、「なるべく早く緩和ケア病棟に入院したい」18.4%、「自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい」23%、「自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」29.4%、「自宅で最後まで療養したい」10.9%、「専門医療機関(がんセンターなど)で積極的に治療が受けたい」2.5%「老人ホームに入所したい」「その他」「分からない」「無回答」はそれぞれ数%となっており、つまり、実際の調査結果は、「自宅で最後まで療養したい」は1割しかなく、最後は「掛かりつけ医や緩和ケア病棟での入院」を希望する割合が8割近くに上っているのである。実際には大多数の国民が最後は入院での看取りを希望しているにも関わらず、厚労省はこの大切な民意を黙殺しているのである。
また平成13年の「国民生活白書」においては、今後、「単独世帯」「夫婦のみ世帯」が増加し、2020年には大半の都道府県において、「単独世帯が最も多い家族類型」になることが推計されているが、内閣府の平成19年度「高齢者の健康に関する意識調査」において「属性別にみた最後を迎えたい場所」は、一人暮らしの世帯構成では「病院などの医療施設」が33.7%に上り、「自宅」の31.8%を上回っているのである。厚生労働省がこれらの国民の声を正確に施策に反映させるつもりであれば、これから激増する「単独世帯」の最大の希望である、「病院などの医療施設」での看取りに、もっと本腰をいれるべきである。日本より平均寿命の低い他国と比較し、真似をする必要が何故あるのだろうか?無理に在宅での看取りを強いる現在の厚労省の方針は国民の民意では決して無い。入院医療費も安価な地域の病床である「有床診療所」を活用すればよいのである。しかし、厚労省の舵は今尚反対方向に切れたままである。
7月、当院では12名の患者様を看取らせて頂きました。3日に1名のペースでの深夜看取りが続き、精神的・体力的にきつく、私も倒れそうになりました。内訳は入院で10名、在宅で2名でした。在宅での看取りの1名は夜中AM2時の往診でした。入院での看取りの1名は在宅(高齢者マンション)での看取りの予定でしたが、病状が進み、家族への負担が大きくなり急遽入院での看取りとなりました。入院での看取りは入院後30日未満の方は2名のみで、他の8名は経過が長く、最長2年の入院期間でした。在宅の方々と入院後30日未満の方々はいずれも癌末期で麻薬による緩和ケアを行いました。1か月以上入院の方は、誤嚥性肺炎を繰り返し、在宅や施設療養が困難となり入院され、入院後何度も危機的状態を乗り越えて下さった方々でした。在宅訪問から引き続き、患者様もご家族の方々も最後まで本当に良く頑張って下さいました。皆様のご協力に感謝し、ご冥福をお祈り申し上げます。
父に留守をお願いし、先日宮崎で開催された第25回全国有床診療所連絡協議会総会に2泊3日で参加致しました。日医の藤川健二常任理事や日医総研の江口成美氏の講演によると、1990年に約2万4千施設(27.2万床)あった有床診療所が本年1~2月頃、ついに1万施設(13万床)を割ってしまったとのことです。不当に抑制された有床診の入院基本料設定の為、入院部門の赤字を外来収益で補填しているところが大半で、有床診療所の経営は依然厳しく、経営者は益々高齢化し、24時間の拘束を敬遠し若い医師が継承を敬遠していることが背景にあります。前回の診療報酬改定で有床診療所入院での看取り加算がようやく設定されましたが、何故か入院後30日迄しか適応が無く、急性期病院と異なり地域に密着した病床である有床診療所では病院の受け皿として在宅や介護施設に戻れない、行き場の無い方々を多く抱えています。その為長期入院となるケースも多く、連日夜中の看取りを行った当院でも7月にこの加算を取れた患者様は2割だけでした。長年有床診療所を経営してきた父を見ても、24時間拘束の為、病院勤務医や無床開業医と同じ1週間の長期休暇を取って旅行に行けるようになったのは、私が東京から帰って留守番をするようになったつい最近、70歳を過ぎてからです。「現存する有床診は、医師の地域医療に対する情熱でもっている。」とは主催県の地元新聞、宮城日日新聞(2012.6.18付)の記事ですが、有床診療所を有償診療所(?)と勘違いしている議員もおり、前途多難です。日本医師会も、実際に現地視察を行い現場の声に耳を傾けて下さった今村定臣常任理事等、有床診の現状をよく理解して下さっている方々の講演は心強かったのですが、肝心の横倉義武日本医師会長の特別講演は、おそらく側近の作成した一般論のみで、有床診をどうにかしようという熱意はあまり感じられず、他の講演者との温度差を感じました。もう少し有床診に耳を傾けてもらい、危機を理解して頂かないといけない様です。
今回の目玉の一つは民主党参議院議員、櫻井充氏の「社会保障ニューディール政策」という講演でした。英国では1997年5月のブレア政権発足後、医療費支出を増やすことで、医療業界の雇用が拡大し、結果として英国のGDPが伸び、債務残高の減少に結びついているデータを示し、日本でも医療費支出を積極的に行う必要を訴えられていて、とても共感しました。私の周囲でも在宅ヘルパーとして活躍しているお母様方を沢山お見かけします。行政は何時まで雇用を土建業に依存するつもりなのでしょうか?地元、田辺市でも、現在、電線の地下埋設を理由に長年育ててきた駅前通りの街路樹を何十本も撤去しています。田辺市の都市計画にはポリシーはあるのでしょうか?造っては潰しを繰り返す我が国と異なり、英国では街や建物を大切に使い、税金を社会保障に有効に利用しています。市議の植樹補助金の使途不明問題を紀伊民報が指摘し、ヤフー1面トピックスにも取り上げられたのは最近の出来事ですが、氷山の一角で無い事を祈ります。
完成まで、今しばらくお待ちください。
入居条件:同居者を食べない事
管理人
入居設備
ベルリン・システム(ライブロックとプロテインスキマー完備)のオーバーフロー水槽。