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有床診療所

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有床診療所について

今日、日本では国の政策によって「在宅での看取り」が推進されています。確かに、介護力に恵まれた家族と同居する高齢者にとって、「住み慣れた自宅」での看取りは理想的です。

しかし、現実の地域社会、特に僻地においては、若者は職を求めて都会に流出し、残された家族の高齢化・核家族化が進み、独居世帯が急増し、孤独死への不安が増しています。老老介護の負担も深刻です。

それにも拘わらず、行政は地域社会が「在宅での看取り」を望んでいると訴え続けてきました。国は人口が多く若者の多い都会を基準として全国一律に在宅医療政策を推進し、見守りを担う若者が絶対的に不足している僻地の実情を全く理解していないと推測します。

近年、行政はようやく僅かに軌道修正を行い、有料老人ホームやケアハウス、高齢者専用賃貸住宅などの居住系施設での看取りを推奨し始めました。しかし、介護負担が増してから入所するこれらの「場当たり的」な在宅は、「住み慣れた自宅」ではありません。また、実際に居宅系施設が看取りの舞台となるのは、老衰で突然死する場合など医療・介護負担が軽い場合に限られます。

現実には病状が悪化し施設での対応が困難になると、設備の整った医療機関への入院を勧められ、退所を強いられる場合も少なくありません。では行政が、決して万全な看取りの場とは言えない居住系施設を推奨してまで「在宅での看取り」に拘る理由は何故でしょうか。医療費亡国論に基づく「病床削減政策」遂行の為です。高沸する病院の入院医療費を抑制する為です。しかし、元来入院治療は医療費の高い病院だけが担ってきた訳ではなく、有床診療所も安価に入院機能を果たしてきたのです。しかし、国はその事実を無視してきました。

少子高齢化の深刻な僻地においては、急増する高齢者の見守りを担うべき若者は職を求め都会に流出し、高齢者を支える若者の数が激減しています。

国は「在宅」を勧めますが、「在宅」では個別に訪問しなくては医療や介護が出来ず、見守る側の効率が極めて悪く、負担も極めて大きくなります。残り少ない地域の医療・介護資源では賄いきれず、僻地社会は近く破綻を来すと推測出来ます。

僻地の脆弱な医療・介護資源の有効利用という観点からは治療を一か所に集約する入院治療は極めて優れており、僻地では「入院」を無視することは出来ません。しかし入院費用の高い病院に依存していては財政が破綻するのも事実です。

経済効率や医療資源を考慮の上で、これからの地域高齢化社会に本当に求められているものは、緊急時に頼れる地域の安価な入院施設・安らかな看取りの場です。その役目を担う最も適した医療システムが日本には昔から存在しています。病院よりも安価な、掛かり付け医による入院医療施設「有床診療所」です。

日本独自の医療文化である有床診療所(19床以下の入院治療可能な診療所)は、1722年12月4日(有床診療所の日)に開設された小石川養生所を起源とし、1948年に施行された医師法第一条により設置され、終戦直後、入院病床の絶対的不足に対しGHQが新設したものです。

外来・入院・在宅と継続して掛かり付け医が責任を持って診療を行うという特徴を持ち、入院や看取りといった地域救急医療の中核を担ってきました。しかし行政は久しく、大病院に入院治療を集約し、有床診療所を重要施策から排除し、入院基本料を病院最低額の半分以下にまで抑制しました。

その結果、この20年間で有床診療所の数は3分の1に激減し、現在も年間約1000もの有床診療所が無床化しており、あと10年も経つと絶滅することになりかねません。この事態は地域での入院や救急医療に深刻な影響を与えており、有床診療所の経営改善が急務と考えた日本医師会は、行政に有床診療所への理解を促す目的で、平成21年春、厚生労働省と共同で全国11の有床診療所の現地視察とヒアリングを実施しました。

和歌山県有床診療所協議会発足に携わった当院は、和歌山県下で唯一の視察対象となり、有床診療所が地域医療で担って来た役割と必要性を訴えました。ようやく平成22年度の診療報酬改定において、10年ぶりの有床診療所入院基本料プラス改定が行われました。しかし、依然として経営環境は厳しく、無床化に歯止めは掛かっていません。

これまでの医療政策により、入院費の高い病院へ入院治療が集約された結果、医療費高沸に拍車がかかっています。入院費の安い有床診療所に地域での入院を広く委ねれば、医療費高沸が抑制され、地域掛かり付け医による看取りや救急医療への参加が容易となり、地域中核病院への負担も減るのです。

医療が病院完結型から地域完結型にシフトしている今日、掛かり付け医による有床診療所の再生は地域医療救済の切り札となります。

その有床診療所は、現在存亡の危機に瀕しています。ビジネスホテル以下の入院基本料により病床経営は全く成り立たず、外来収益からの補填で辛うじて運営されています。極めて厳しい経営環境にあり、施設や設備の更新は滞り老朽化が深刻となっています。急患や看取りの増加する高齢化社会において有床診療所を担う医師の肉体的・精神的負担も大きく、病院勤務医と異なり交換要員も配置できず、24時間拘束され、極めて過酷な労働環境です。この厳しい実情は子育て医師の家庭崩壊を導き、若手医師は継承を敬遠しています。有床診療所を担ってきた医師も高齢化が進み、継続が困難となり、無床化に追い込まれています。早急に有床診療所の待遇を改善し、入院基本料を病院最低ラインまで引き上げなければ、安価な地域救急医療の担い手、有床診療所の歴史は閉じます。行政はトップのすげ替えで責任を回避し、地域住民がその付けを払うことになるのです。

逆境の中、残存する有床診療所は、崩壊の進む地域医療を守る為「全国有床診療所連絡協議会」を軸に、全国各地でレジスタンス活動を展開しています。

2011年12月4日

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