お知らせ

今日の医療行政、どう思いますか?

_2012.03.07

管理社会を痛切に皮肉った27年前の映画「未来世紀ブラジル」。21世紀の何処かの国に似ていませんか?

 

国民の住居を覆い尽くすダクト。個人情報が行き交い、独裁的な情報省に繋がっている。行政管理は最悪。しかし漏えいを恐れ、民間によるダクト修理は禁止されている。ある日、記録局の印字ミスから善良な市民がテロリストと間違われ処刑される。しかしどの官僚も己の身を守ることに必死。過ちに気付いた真面目な公務員は何時しか犯罪者として捕えられ、尋問を受け発狂。夢の中でようやく理想郷に辿り着く。この恐怖の結末は何度観ても救いようがない。遣っていられない。だから陽気なサンバ「ブラジルの水彩画」が添えられている。悪夢そのもの。「カルト映画」とビデオのパッケージには書いてある。

 

最近、今日の医療行政を危うく思う出来事が沢山あり、この映画を掘り起こして観たのである。自らの怠慢な社会保障管理の結果、蓄積する負債に追い詰められた日本の官僚は、自己の利権確保の為、なりふり構わず自らに飛び火しない内に、民間から返済費用を搾り取る政策を連発。ついには国民の生命に関わる医療政策までも餌食として経済効率第一で推し進めている。少子高齢化で激変する地域医療現場は流動的・複雑・多忙で、医療費削減の為、現場の医師の供述聴取を拒絶している官僚には到底把握できるものではなく、地域で奔走している医師が行政に一々説明している時間的・体力的余裕も無い。実際に地域医療に携った事の無い官僚が場当たり的に作る医療政策間には整合性がなく矛盾点も多く、医療現場は混乱。挙句の果てに、驚くべき事態が発生している。患者一人当たりの診療単価が高い医療機関に行政は集団的個別指導を強制し、翌年も診療単価が高ければ医療機関に大変な負担を強いる個別指導を受けさせるとの「脅迫」を行っている。医療機関によって取り扱う患者の重症度や対処能力に大きな違いがあるにも関わらず、現場を知らない行政は、診療単価が平均より高いと、ただそれだけの理由でその医療機関を悪とみなし、翌年の診療単価を下げなければ制裁を加えると「脅迫」している。負担の大きな行政指導を何度も受けさせることによって、積極的に救急医療や在宅医療、終末期医療を行っている地域の医療機関が、まるで犯罪者であるかのように洗脳され、少子高齢化で崩壊しつつある地域救急医療現場の士気を損ね、医療現場を妨害している。映画の尋問場面が思い浮かぶ。

 

地域医療崩壊を食い止める為、高い保険点数を餌に、これまで負担の重い救急医療や時間外診療、在宅医療や終末期医療への取り組みを推進してきたのは他でもない行政である。その行政の勧めに従い真面目に取り組み診療単価が上がった医療機関を、逆に診療単価が高いと行政指導で罰している。余りにも矛盾し、ご都合主義的でお粗末な行政措置である。

 

当院は終末期医療に取り組む有床診療所で、多くの看取りを行っている。特に近年は高齢化が進み急患や看取りの数が激増。今年初めの2か月間で13人を看取ったが、これは前年の倍である。在宅診療も行っており、60人以上の在宅患者を抱えており、終末期の重症者も多数存在する。入院も在宅も外来も、高齢化により医療をしっかり施してあげないと、本当に命に係わる事態を来たしてしまう。必要な処置を講じなければ、罰せられるのは医療機関であり冗談にならない。当院では看取りまで行う為、早々に救急病院に紹介する診療所よりも重症患者が多く、それだけ治療も必要で診療単価が高くなる。これは当然の成り行きである。救急病院の負担軽減に繋がる救急診療や緊急入院、時間外・休日診療も担おうと努力しているが、こうした救急医療を積極的に行えば診療単価が上がるのは当然である。行政には医療機関毎に異なる診療内容をリサーチして評価する能力も無い。医療機関毎の診療内容の違いを無視し、お粗末な統計データを頼りに、すべての医療機関を一律に評価し、行政指導という「脅迫」を振りかざし暴れている。その結果、開業医の救急医療への参入意欲を削いでいる。今の医療行政では理想の地域医療は成り立たない。地域医療の現状をあまりに知らない日本の行政にこれからの少子高齢化社会のかじ取りが本当にできるのか?

 

診療報酬の審査・査定も詳細な査定基準を決して公にせず、その非公開の基準に合わないとの理由から一方的に査定を行っている。基準が公表されず、またその基準が公の場で論議されず秘密裡に処理されているこの現状は、まさしくダクトで情報統制された独裁国家と変わらない。国が破産するのも困るが、人の命を担う医療政策をレジスターから逆算する近年の行政の発想はやはり危険である。

 

日曜の正午。数日前から食事が摂れず38度熱発し診察を求めてきたお年寄り患者様の来院を待っている。有床診療所である当院は、休診日も午前中は入院診療を兼ねて掛かり付け患者様の外来救急要請に出来る限り応じている。心電図、採血、レントゲンやCT検査、休日緊急入院も行っている。こうした休日診療も診療単価の上昇につながり現状では行政指導を受ける要因となる。理不尽でとても腹立たしい。遊びに連れていってもらえない子供達は何時も塞ぎ込んでいる。

遣っていられないから陽気なサンバでも聞きましょう。

この国の利権を優先する官僚システムが存続する限り・・・。

医療法人 外科内科 辻医院

一般病床・医療療養型病床

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